ニキビの塗り薬は涼しいところで保管しましょう(ニキビの薬と発がん性)
基本のニキビ治療薬(ベピオやデュアック、エピデュオ、ディフェリン)は過酸化ベンゾイルまたはレチノイドが主成分となっている塗り薬で、日本や米国などのニキビ治療ガイドラインで一番にオススメする塗り薬となっています。2番手くらいにアゼライン酸、その次くらいにサリチル酸があります。
4種のニキビ治療薬にはそれぞれ以下のような指定の保管温度があります。
・ベピオ:25度以下
・エピデュオ、ディフェリン:30度以下
・デュアック:2~8℃
ややこしいので、沖縄ならとりあえずどれも冷蔵庫に保管しておけばいいんじゃないでしょうか。子どもに任せていると塗った後に薬をほったらかしにしがちですが、すぐダメになるわけではないので気付いたらまた冷蔵保存して継続使用しても大丈夫です。ただし車内など高温になる場所への放置はやめておきましょう。
【おまけの話:ニキビの薬でガン?】
ニキビの塗り薬はあまりに高温の中で保管すると、薬効が低下すること以外にちょっと怖い(かもしれない)話もあります。
2024年、アメリカの研究所 Valisure は過酸化ベンゾイルを含むニキビ治療薬(日本ではベピオ、エピデュオ、デュアック)を 高温環境(65℃で2週間など)に置くと、急性骨髄性白血病(AML)を引き起こしうる発がん性物質「ベンゼン」が高濃度で生成される可能性があると報告し、該当製品の回収を米国食品医薬品局(FDA)に要請しました。さらに、同年、Valisure の社長はいい塩梅でグリセリンを混合するなど過酸化ベンゾイルがベンゼンに変化するのを防ぐ製造方法の特許を出願したそうです。
今のところ過酸化ベンゾイルを使用したニキビ治療薬で白血病が増えたということはないようです。230 万人以上のニキビ患者の調査で、BPO 処方のあるニキビ患者では 0.012% が AML と診断されたのに対し、BPO 使用の記録がない患者では 0.017% という報告もあります。とりあえず処方薬としてちゃんとしているもの(なにせ米国ではやや信頼性に難がありそうな100種類以上の過酸化ベンゾイル使用薬が市販されているそうです)は大丈夫そうですが、今後どうなるか一応注意はしておいていいかもしれません。
【発がん性物質にもランキングがある】
世界保健機関(WHO)のがん専門機関である 国際がん研究機関(IARC:International Agency for Research on Cancer)は、いろいろな物質を発がん性の証拠の強さによりをグループ分けし公表しています。ただし、この分類は発がん性の強さや、暴露量によるリスクの大きさを示すものではありません。
分類は以下の4つのグループに分けられます。
・グループ1:ヒトに対して発がん性がある。(プルトニウム、日光など)
・グループ2A:ヒトに対しておそらく発がん性がある。(牛・豚など哺乳類の肉、熱すぎる飲み物など)
・グループ2B:ヒトに対して発がん性がある可能性がある。
・グループ3:ヒトに対する発がん性について分類できない。(コーヒーはここです。ちょっと嬉しいです)
ベンゼンはこのうち一番上のグループ1に分類されています。じゃあやっぱり過酸化ベンゾイルは危ないかと言うと、グループ1には他にもお酒、タバコ、副流煙、B型肝炎など色々なウイルス、加工肉(ソーセージ、ハム、缶詰肉など)もあります。*繰り返しになりますが、プルトニウムとソーセージが同じグループにあるように、この分類は発がん性の強さや暴露量によるリスクの大きさを示すものではありません。