メニュー

酒を飲むと皮膚がまだらに白くなる(赤くなる)~貧血母斑かもしれません。

[2023.09.13]

母斑とはだいぶ大雑把に言うと黒いほくろや白や赤色のあざといったもののことです。

そのうち貧血母斑とは、生まれつき背中など一部の皮膚が淡く白くなっており、成長しても変わらず、飲酒や運動で周囲の皮膚が赤くなってもその部分だけ赤くならないというものです。このため酒を飲むと背中がそこだけまだらに白く抜けているかのように見えます。

飲酒や運動で皮膚が赤くなるのは皮膚の血管が拡張して血流がよくなるからですが、貧血母斑部分では生まれつき皮膚の血管が収縮しっぱなしのため、酒を飲んで周囲の皮膚が赤くなっても貧血母斑部分だけ白いままなので目立ってしまいます。神経線維腫症など一部難病の症状として生じやすいとはいえ、健常人でも100人に1人くらいにはあるとされます。見た目は気になるかもしれませんが、放置しても問題はなく良い治療法もありません。

飲酒時にまだらに赤くなっているように見えるので、本来とても珍しいはずのアルコールアレルギーと勘違いされる場合もあります。ちなみに血液検査の時にアルコール綿で拭かれたところが赤くなるからといってアルコールアレルギーではなく、たいていは遺伝的にお酒に弱い人(アルコール不耐症)です。私もアルコール分解酵素がとても弱い体質でコップ半分のビールで全身真っ赤になります。血液検査の時などアルコール綿で拭くと肌が赤くはなりますが、気にせず使用しています。じゃあアルコールアレルギーの検査はどうするのかと言うと、これがなかなか難しいようです。

似たようなもの(同じものという意見もあります)にビアスポットという症状があります。これはビール飲んだら出てくるビア(beer)スポットではなくて、ビアさんが命名したBier spotsです。普段の姿勢で手などにまだらに白い部分があって、手を挙げるとそれが消えるというものです。貧血母斑同様に一部の皮膚の血管が異常に収縮しっぱなして白く見え、手を挙げると周囲の皮膚の血流も減って白くなるので目立たなくなります。

 

補足事項(一般向けではない個人的備忘録です)

過剰診療になりかねないので、貧血母斑は特に尋常性白斑や脱色素性母斑と鑑別する必要があります。

鑑別点:

・病理組織:貧血母斑では組織学的異常所見はない。

・間擦・温熱刺激:白斑と異なり、貧血母斑部分は刺激を加えても赤くならない。

・薬疹などでも貧血母斑部位は白く抜けて見える。

・硝子圧法:周囲の血管も圧迫されると貧血母斑は不明瞭になる。

・ダーモスコピー:非接触式だと周囲と比較して血管が少なく見える。

・UV撮影:白斑と異なり健常部との比較でメラニン沈着の差異がない。

・wood灯:貧血母斑ではメラニンの異常はないので、白斑のようにWood灯で青白く強調されて見えることはない。

 

参考画像

尋常性白斑:ダーモスコピーでもUV撮影でも白く見えます。

 

貧血母斑:通常状態なので淡くもやもやと白く見える程度です。接触式ダーモスコピーで圧迫しているので病変部がよく分からず、UV撮影でも正常部位と違いが分かりません。

 

 

参考

1) 飯島正文, 玉置邦彦,他編:貧血母斑 最新皮膚科学大系(第11巻):80-81(2004)

2) Logan Kolb, Todd Troxell, Karthik Krishnamurthy. Nevus Anemicus. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2023.

3) Vikram K Mahajan et al., Bier spots: An uncommon cause of mottled skin. Indian Dermatol Online J. 2015.

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME