白髪は子供にもある。
白髪は老人の特徴という面はありますが、幼年期からの継続的な老化現象でもあります。5歳から92歳までの日本人3985名の調査で、頭部の白髪の発生率は以下の通り。
5~9歳の白髪発生率:9.8%ほど(主に頭のてっぺんや後ろ)
10~14歳:13.7%ほど(主に頭のてっぺんや後ろ)
15~19歳:28.6%ほど(主に頭の横や後ろ)
その後男性では30代前半から、女性では30台後半から急速に増加していき、50代では男女とも100%白髪が出ています。頭部よりはやや遅れて、鼻毛、眉毛、まつ毛と白髪が出てきます。
子供でも自然な白髪はあり得るとはいえ、尋常性白斑や円形脱毛症、遺伝性疾患に伴う白髪もあります。
【ここからは余談です】
・白髪は色の抜けた透明な毛。シロクマは透明な毛が生えた地黒の熊(ざんねんないきもの事典より)
・白髪の人はハゲになりにくいまたはなりやすいか?
よく分かっていないようです。白髪は黒髪より太いことが多くしっかりしていて、単に黒髪が先に抜けて残った白髪が目立っている人がいるだけという説はあります。
・マリー・アントワネットは突然白髪になった?
突然の白髪化はまだ解明されてはいません。とはいえフランス王国の王妃マリー・アントワネットが急速に白髪化したという有名なエピソードの他にも、現代に至るまで急速に白髪化したという報告はその信頼性はともかく多数あります。
強いストレスは髪の色素を作るメラノサイト幹細胞の急激な減少と機能不全を引き起こすそうで、人為的にストレスを与えたマウスで白髪が急速に増加したという実験もあります。ストレスは円形脱毛症の原因の1つかもとも考えられていますが、頭全体に急激な円形脱毛症が起きて黒髪が先に抜けてしまった結果、急に白髪になった様に見えていたという例もあります。
・白髪の治療・予防薬はあるか?
白髪に効く!と謳う〇〇オイルとか生活習慣はいくつもありますが、どこまで効果があるのかはなんとも言えません。
東京大学医科学研究所の研究では、癌細胞表面に出てくる免疫細胞の攻撃から逃げるような物質(PD-L1)が老化細胞の一部にも出ていること、これによって老化細胞が免疫によって除去されることから逃れていることが分かっており、このPD-L1の働きを邪魔するような薬(抗PD-L1抗体など)を使うと老化細胞が除去され、動物実験では老化現象が改善されたとのことです。癌に対して抗PD-L1抗体などで治療すると白髪が黒髪になったという例もあり、白髪の再黒髪化メカニズムの研究も始まっています。
参考
- Harumi Terada:Appearance of gray hair as an aging phenomenon in Japanese,Okajimas Folia Anat Jpn, 1956 Sep;28(1-6):435-49.
- Francisco, J. et al. Canities Subita after Extreme Trauma Showing Positive Staining for Anti-PD-L1 Antibodies: A New Clue into Etiopathogenesis?,Skin Appendage Disord. 2022 Jan; 8(1): 65–69.
- Nahm M, Navarini AA, Kelly EW. Canities subita: a reappraisal of evidence based on 196 case reports published in the medical literature. Int J Trichology. 2013;5((2)):63–8.
*余談のさらに余談
ここまで書いておいてなんですが私自身は自分の白髪に無頓着です。
ご存知マリー・アントワネットはフランス革命時代、ルイ16世の王妃として断頭台で処刑されたことも有名です。色々本を読むとよくもまあここまでとあきれるほど数多くの強烈な個性の人物が出てきて大変面白いフランス革命ですが、幽閉されたルイ17世(アントワネットのまだ幼い息子)への虐待や革命の指導者ロベスピエールの最期を知ると、松本サリン事件の時に松本市に住んでいた私には、理念が先走った人間集団のおぞましさも感じます。