保湿剤は万能薬ではありません。夏に保湿剤を塗っていると子どものあせもがかえってひどくなることがあります。
だんだん暑くなってきました。この時期から増えてくるのが、保湿剤を塗っていることでひどくなる子どものあせもです。あせもと汗かぶれが同じとか違うとか、あるいはあせもにいくつかのタイプがあるといった細かい話はさておき、ともかく「汗をかいて皮膚が赤くなる」「ぶつぶつができる」「かゆくなる」など、汗をかくことによって生じる皮膚の症状を、まとめて「あせも」と呼ぶことにします。アトピー性皮膚炎で皮膚の乾燥が特に強いわけでもないお子さんの場合、夏でも冬でも同じように入浴後すぐに頑張って保湿剤を塗っていることでかえって皮膚症状が悪くなり「保湿剤を塗っているのに皮疹が治らない」ということがよくあります。特に4歳未満の子どもや寝たきりの方はあせもになりやすいですから、対策をしていきましょう。
【あせも対策】※乾燥肌があまりひどくない子での対策です。アトピー性皮膚炎がひどい場合はより個別の対応が必要となります。
(1) 保湿剤は汗が引いてから、あせもができにくいタイプを使用しましょう。
あせもができやすい保湿剤は、以下の3段階に分けられています。
・最もできやすいもの:ワセリン、パラフィンなど
・中等度のもの:保湿クリーム、乳液タイプのローション
・あせもができにくいもの:液状タイプのローション
よく知られているヒルドイド®ローションの先発品は乳液タイプで人気がありますが、ワセリンやセタノールも配合されています。そのため、しっとり感が長続きするものの、あせもに関しては中等度のリスクになると考えられます。先発品は子どもでも自己負担金が発生するため、特にこだわりがなければ、よりさっぱりとした化粧水タイプの保湿剤のほうが良いでしょう。
タイで行われた「乳児期にエモリエント剤*を塗るとアトピーになりやすい子の発症を防げるか?」という研究では、エモリエント剤を赤ちゃんに毎日塗布すると、アトピーの症状は軽減したものの、あせもやとびひは増加したという結果が出ています。したがって熱帯地域では、保湿剤は毎日ではなく、環境や皮膚の状態などに応じて適宜塗布する方が良いだろうと報告されています。
*エモリエントとは、ワセリンなど皮膚に膜を張るようにして水分蒸発を抑えて保湿作用を発揮するもので、汗の出口を詰まらせてしまう可能性があります。
(2)肌を冷やす
特に沖縄の気候だと、温かいお風呂に浸かるのは冬だけにして、暑い時期はなるべくぬるめのシャワーを数回浴びる方が良いでしょう。冷たい濡れタオルを当てるのも有効とされます。熱帯地域でのあせも対策を見ると、冷やしすぎないように注意して1日に3回以上冷たい水に浸かりましょうとまで推奨されていたりしますが、ちょっと難しいですね。
(3) 肌を自然乾燥させましょう 重ね着を少なくし、子どもが寝るときには扇風機の使用も考慮しましょう。夏場に温かいお風呂に入って火照った肌にすぐに保湿剤を塗ると、この自然乾燥がうまくいきません。
参考
1)室田 浩之. 新・皮膚科セミナリウム発汗と皮膚疾患 発汗と皮膚炎(解説). 日本皮膚科学会雑誌. 2021;131(1):43-47.
2)Techasatian L, Kiatchoosakun P. Effects of an emollient application on newborn skin from birth for prevention of atopic dermatitis: a randomized controlled study in Thai neonates. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2022;36(1):76-83.