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水虫はかゆくないのが普通

[2023.12.12]

 水虫はカビの一種で人や動物の皮膚に好んで生着するものがいます。5人に1人はもっているという水虫ですが、テレビの影響なのか、かゆいから水虫あるいはかゆくないなら水虫ではないと思い込んでらっしゃる人が沢山います。ところが実際には水虫の人で痒くなる人は1割程度で、しかも痒いのは夏だけだったりします。なのでかゆいかどうかに関係なく、足の皮がむけていたり、水ぶくれが出来たり、爪が白く濁っていたりする場合は水虫に感染していないかどうか、あるいは他の皮膚病ではないか皮膚科で調べてもらったほうがよいでしょう。また、水虫は足だけではなく頭から胴体手足とどこにでも感染します。*股の白癬(いんきんたむし)は痒いのが普通です。

 水虫がどこでうつるのかですが、水虫の人がいる家庭やいろんな人が使用する温泉、シャワールームの床や足拭きマット、スリッパなどにはほぼ100%水虫が存在しており、それが足にくっついて皮膚に侵入し増えていきます。水虫は30度前後の温かい温度と90%以上のじめじめした湿度が大好きなので、ずっと靴下と靴を履いているような足だと1日で感染が成立します。しかし水虫自体の感染力は強くはないので、石鹸で洗ったり、裸足で1時間過ごすという程度で付着した水虫が消失したりします。もちろん、水虫が皮膚にしっかり生着してしまったら、石鹸で洗ったり乾かしたりするくらいでは治りません。

 というわけで水虫を予防するために、脱衣所などいろいろな人が裸足で歩くところに行った後には、なるべく早めに足を石鹸で洗ってしばらく乾燥させるようにしましょう。靴を履く時間が長い人は、できるだけ靴と靴下をとって足を乾燥させる時間を設けるとよいでしょう。家族に水虫の人がいた場合、足から落下した水虫はマットやスリッパの中などで何ヶ月も生きていて、次の人の足にくっつくのを待っています。床などは水拭き程度でほぼ大丈夫です。洗濯すると水虫は死滅するので、水虫の人のはいた靴下と他の人のものを一緒に洗濯しても大丈夫です。

 水虫の治療は根気がいります。治療すると決めたら両足全体に薬を塗ります。塗る薬は市販薬でもいいのですが配合成分により病院で出される軟膏よりはかぶれやすいので注意しましょう。足がきれいになったように見えても皮膚の奥には水虫がいるので、見た目がよくなってからも皮膚の皮が生まれ変わるまで1~2ヶ月くらいは長めに塗り続けましょう。

 

【研修医向けの余談】

 皮膚科のない研修病院だと、受け持ちの入院患者さんに白癬の疑いがあると言われても先輩の先生はそんなものに興味はなく誰もみてくれないため、研修医が一人で判断して処方しないといけないことになりがちです。本来は白癬菌の存在をちゃんと確認してから治療すべきなのですが、そうも言ってられない現実もあります。Gram染色は教わってもKOH直接鏡検は誰も教えてくれないでしょうし。

 表在性皮膚真菌症に対して何か外用薬を使うと決めたら、種類がいろいろあって迷うこともあります。ちょっと真面目な研修医だと、感染症なので皮膚糸状菌なのかカンジダなのかマラセチアなのか鑑別してできるだけターゲットを絞ってより効果のある薬をと考えるかもしれません(ちなみに皮膚科専門医試験ではT.rubrumとT.mentagrophytesとどちらの頻度が高いかとか、T. mentagrophytes complexはT. interdigitaleに変更だとか、とてもつまらないとても大事なことが試験のヤマだったりします)。添付文書の適応菌腫はあまり当てにならない場合もあるので、とりあえず皮膚糸状菌にもカンジダにもマラセチアにも効果の高いルリコナゾールかラノコナゾールを選んでおけばよいでしょう。もしこの2剤のうちどれかに接触皮膚炎を起こす場合は、別系統のリラフタナートやブテナフィン、テルビナフィン、アモロルフィンを選びます(白癬菌のみ対応ですが)。入院患者さんに使われることはないとは思いますが、エフィコナゾールなど爪白癬専用の薬を真菌検査なしに処方すると査定されてしまいますので、これらの処方は皮膚科医に任せましょう。細菌と違って真菌はあまり薬剤耐性を獲得しないのですが、皮膚糸状菌には効果の高いテルビナフィンには耐性白癬菌が出てきています。他にも薬剤耐性真菌感染症の増加は、外用の抗真菌薬の過剰処方が原因だろうとも言われてもいます。とはいえ、確定診断つけるまで処方を控えることを許してくれない方も多数おられることも厄介な事実ではありますが。

 

参考

1) 日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019

2) 皮膚科臨床アセット4 皮膚真菌症を究める

3) 加倉井真樹,加納塁,原田和俊,ほか:テルビナフィン耐性白癬菌ー広範囲体部白癬の在日インド人親子例―. 真菌誌2022;63:59-65.

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