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塗り薬は、「薄く塗ってください」と説明されてもたっぷり塗ったほうがよい

[2023.03.31]

薬局で「軟膏は薄く塗ってください」と指導されることはいまだ珍しくありませんが、実際には保湿剤やステロイド軟膏はせっかく塗るからにはティッシュが付くくらいベタベタと、テカテカ光沢が出るくらい塗ったほうが効果があります。どのくらい塗ったらいいかという目安によく言われるものとして1FTU(ワン・フィンガー・チップ・ユニット:指先にニュルッと出したらそれが手の平2枚分の面積に塗る量)というものがありますが、私としてはそんなに分かりやすい方法とも思わないので、とりあえず多めにべたべた塗るようにすればよいと思います。入浴後に塗らないといけないとか、塗る順番とかはそれほど気にしなくても構いません。

しかしべたつくように軟膏を塗る作業を毎日やるのはかなり大変です。最近はアトピー性皮膚炎などで注射や飲み薬と新しい薬が増えてきて痒みが減り、塗る手間も少しは減らせるようになってきていますから、特に受験生などいらっしゃる親御さんなどは皮膚科で聞いてみてください。

 

【補足】

 薬剤師によるアトピー性皮膚炎ガイドラインなどを逸脱した「薄く塗るように」という指導は日本だけでなく外国でも問題となっているようです。日本では80.3%の薬剤師が過去にガイドラインを逸脱した“薄く延ばして塗布”する指導経験があり、現在でも“薄く延ばして塗布”する指導をしている薬剤師が20.3%いたという調査結果があります。ちなみに薄く延ばして塗布する指導をした理由として,それが正しいと思い込んでいたとか、先輩薬剤師による指導など明らかな根拠のないものが 66.4%だったそうです。

 

 保湿剤やステロイド軟膏は、多めに塗ったほうが効果があったという報告は沢山あります。塗る量の説明として有名な1FTUですが、よく出てくる初期の論文(4)では5mm口径のチューブから1FTUで塗ったら皮膚が良くなったという話ではなく、1FTUで体格差にあまり関係なく体表面積当たりの塗布量が一定にできたという内容です。ステロイド軟膏などは特に5mm口径チューブよりは小さいものが多いので、実際には2FTUくらいがいいかもしれません。

 

参考

1)山浦克典: 掻痒性皮膚疾患の外用療法と薬局薬剤師の役割, YAKUGAKU ZASSHI;139:1563-1567(2019).

2)地嵜悠吾,その他:ステロイド軟膏製剤の塗布量に関する新規基準の提案,医療薬学,37:637-642(2011).

3)大谷真理子,その他:保湿剤の効果に及ぼす塗布量および塗布回数の検討, 日皮会誌, 122:39-43(2012).

4)Long CC, Finlay AY. The finger-tip unit—a new practical measure. Clin Exp Dermatol, 16: 444-7(1991).

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