ビニールプールで遊ぶときは、皮膚が赤く痒くなることがあるのでよく洗ってから使用しましょうー緑膿菌性毛包炎ー
そろそろ仕舞っておいたビニールプールを出して使うご家庭が増えてくる頃です。この時期に増えてくるのが、久しぶりにビニールプールで遊んだら体のあちこちが赤く痒くなったというお子さん達です。シーズン最初に遊んだときに発症したということが多いので、ビニールプールを久しぶりに使う場合は洗剤も使ってよく洗ってから使うようにしまうしょう。使用後に濡れたままにしておくと水分を好むバイキンが増えやすいので、よく洗ってから乾燥させるようにしましょう。
もし赤く痒くなってしまっても大抵は自然治癒しますが、時にはおできができて悪化したりすることもあるのであまり痒がったり痛がるようなら皮膚科受診したほうがよいでしょう。
補足:緑膿菌性毛包炎(英名:Pseudomonas folliculitis、Hot Tub Rash)
ビニールプールや一般的プール、ジャグジーなどに入ったあとに発症する皮疹として知られているのが緑膿菌性毛包炎です。緑膿菌はあちこちに存在していて普通の人に対して悪さをすることはあまりありません(治療薬によるダメージを無効化する特殊スキルを沢山持つために病院では警戒されるモンスターではあります)。水中や湿気のあるところが特に好きなのですが、乾燥させ低温環境に2ヶ月保管されたビニールピール表面にまだ緑膿菌がいたということもあるようです。
緑膿菌性毛包炎の症状は、虫刺症、汗疹、接触皮膚炎、じんま疹、水痘などとも混同されることもあるという特徴があるようで無いようで厄介です。潜伏期間は8時間から5日間と幅がありますが多くは48時間以内に発症します。一般的には脇、お尻、四肢にかゆみと伴う丘疹/毛嚢炎が多発し、浸出液や痛みを伴うこともあるようです。その他に、風邪のような症状や乳房の痛み、腋窩リンパ節腫大も特徴として挙げられています。足底に痛みを伴う小結節が多発するというホットフット症候群を伴うこともあります。
基本的には数日~2週間で自然治癒することが多いので感受性を無視した治療薬でもなんとなく治ってしまうことが多いようですが、時には感染が進行することあるようなので、色々なリスクが想定される場合には細菌培養を取っておいたほうがよさそうです。遊んだあとにシャワーを浴びれば洗い流されてよさそうなものなのですが、予防効果はないそうです。
余談:ビニールプール使用後の皮膚障害を調べても緑膿菌性毛包炎しか出てこないのですが、個人的にはシーズン最初の使用後に発症し毛包炎ではなく痒い紅斑が多発していることが多い印象もあり、本当に緑膿菌だけが原因なのか?という疑問はあります。ビニールプールの成分であるポリ塩化ビニルや可塑剤はかなり安全で皮膚炎を起こしたという報告もないようなのでなんとも言えないのではありますが。ともあれ、使用前後にはしっかり洗ったほうがよいことは間違いないようです。
参考
- Tate D, Mawer S, Newton A: Outbreak of Pseudomonas aeruginosa folliculitis associated with a swimming pool inflatable, Epidemiol. Infect. 2003, 130, 187–192.
- 滝上正, 丸山光雄: 緑膿菌性毛包炎の多発例に関する臨床的研究―わが国での最初の報告及び文献的考察―, 感染症学雑誌, 1992; 66: 360-366.