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アトピーの治療

アトピー性皮膚炎は未だに病態がはっきりしない部分も多く、いろいろな治療を受けても完治が難しい方も多い病気です。当院では基本的には皮膚科ガイドラインに沿った標準的治療を行っており、ステロイド軟膏もしっかり使用致します。

比較的新しい治療薬であるデュピクセント®などの注射薬やオルミエント®などの内服薬の導入も当院にて行っています。

ステロイド軟膏の登場から長らく治療法に大きな進歩がなかったアトピー性皮膚炎ですが、以下に挙げるように近年は全く新しい機序の外用薬、内服薬、注射薬が続々と開発され、小児にも徐々に使用できるようになってきています。新しく強い治療薬は高価ではありますが、かゆみや皮膚の赤みで勉強や仕事など日常生活に支障をきたしているような方、特に受験生には良いのではないかと思っています。しかし新しい薬らはあくまでも軟膏による治療を半年以上継続しても症状が改善しない時に使用するという規定があり、これまで長期間治療していなかった方にすぐに使用することはできません。

【塗り薬】

①プロトピック®軟膏:成人用と2歳以上の小児用があります。価格は他の半分以下。効果と長期安全性にも比較的優れているのですが、最初は刺激があるので皮疹が改善する前に嫌がってやめてしまう方も多いのがネックです。

②コレクチム®軟膏:成人用と小児用があります。生後6ヶ月から使用できます。プロトピックやモイゼルトと異なり、接触皮膚炎を起こすことがあるプロピレンが入っていません。 

③モイゼルト®軟膏:安全性(ワセリンより副作用が出ていない)・使用感(ほとんどヒリヒリしていない)は良いようです。顔面に塗布した比較試験ではだいたい4群ステロイド(ロコイド®など)と効果は同等、コレクチムやプロトピックと比べてもまだあまり差はないようですが、実感としては使いやすいとはいえ微妙な感じです。添付文書には「妊娠可能な女性には、本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導すること」という文言があります。

④ブイタマークリーム®:2024年10月に出た薬です。1日1回だけ塗ればよいこととクリームであることがメリットです。使用初期の副作用に頭痛があるという珍しい外用薬です。1年くらいかけてゆっくり効果が出てくるようですので長く続けるとよい外用薬だと思うのですが、効果が出る前にやめてしまうことにならないかという懸念はあります。

【注射】

④内服JAK阻害薬(オルミエント®、リンヴォック®、サイバインコ®):オルミエント®は2歳以上から、リンヴォック®とサイバインコ®は12歳から使用可能です。1日1回内服します。効果については非常に即効性があります。導入にあたってはデュピクセント皮下注よりも条件が厳しく血液検査やレントゲン撮影などが必要です。当院でも患者さんによっては導入可能です。

⑤デュピクセント®皮下注:生後6ヶ月から使用可能(注射であることがメリットでもデメリットでもあります)。外用薬のみでは症状のコントロールが難しい方に適応となります。月1~2回くらい皮下注射します。重症アトピー性皮膚炎の治療薬のなかでも結膜炎が出やすかったり顔の赤みが残りがちであったりはします。

⑥アドトラーザ®15歳以上が適応です。デュピクセントと似た2週間おきに皮下注射する薬です。これまで1回2本打たないといけなかったのですが、1回1本の注射で済むように改良されました。デュピクセントで顔の赤みが残る人によいです。

⑦イブグリース®:12歳以上から使用でき、2週または4週おきに注射します。効果と安全性について個人的には割と期待しています。デュピクセントで顔の赤みが残る人にもよいです。

⑧ミチーガ®皮下注:6歳以上から使用可能で4週毎に注射します。どちらかというとかゆみに対して効果を発揮する薬です。何かと手間がかかる注射かつ副作用も強めなので使用する人を選ぶ注射です。

 

*アトピー性皮膚炎に対する注射治療は、効果が期待できる反面、費用が比較的高くなることがあります。そのため、高額療養費制度や、ご加入の健康保険にある付加給付制度(健康保険組合によって異なる)について、事前に確認しておくことをおすすめします。初回の薬代や多数回該当など細かく計算するとわけが分からなくなってしまうので、高額寮費制度を利用して費用を抑えやすい治療パターンをかなりざっくりと以下のようにまとめてみました。

【費用を抑えやすい治療の目安(2025年4月時点)】

年収770万円以下の場合→ デュピクセント、イブグリース(2週ごと注射)、またはミチーガで。

年収770万円以上の場合→ 高額療養費制度の利用は難しいため、比較的安価なイブグリース(4週ごと注射)で。最初は2週ごとに注射して症状が改善してきたら4週ごとにするのもいいでしょう。

【計算の元となる薬剤費(3割負担額)】

デュピクセント 4週分:約3万2500円  12週分:約9万6600円

アドトラーザ  4週分:約2万5500円  12週分:約7万5400円

イブグリース  4週分:約1万5500円  12週分:約4万5800円(4週ごと注射の場合)

        4週分:約3万500円   12週分:約9万1500円(2週ごと注射の場合)

ミチーガ    4週分:約3万5000円  12週分:約10万5000円

※この内容は2025年4月時点の薬価や制度に基づいており、今後の変更によって費用も変わる可能性があります。

※高額療養費制度は、「同じ健康保険に加入しているご家族全体の1か月分の医療費」が対象となります。詳細は、加入している健康保険の窓口にご相談ください。

 

☆初診からいきなり注射を希望されても出来ません。塗り薬を使いながら何回か通院して頂き、お話を伺いながら治療の選択肢を相談していきます。

☆皮膚病で死ぬ人はいないと思っている方も多いですが、アトピー性皮膚炎や長引く湿疹として治療していてあとから実は悪性リンパ腫だったという例はそれほど珍しくありません。若い人でも命を失う結果になってしまった例もあり、経過のよくない場合や強い治療を行う場合には、念のために皮膚を切り取って調べる検査を行うこともあります。

☆上記治療の前に、基本的に重要なのが保湿剤の塗布です。特に子供に毎日数回塗るのは大変ではありますが大事です。*ただし季節に応じて保湿剤を塗るタイミングは考慮したほうがよいです。暑い時期は入浴直後よりは汗がひいてから塗るほうががよいでしょう。では何を塗ったらよいのか?たいていの本には何を塗るかではなくしっかり継続することが大事と書かれています。私も値段、塗り心地などなるべく続けられそうなものを選ぶことが一番だと思っています。とはいえ比較するとどうなのか、確定しているわけではないので鵜呑みしてはいけませんが保湿能力とバリア機能回復の面で順位をつけるとしたら、セラミド配合クリーム>ヘパリン類似物質>尿素クリーム>グリセリンという感じの報告がいくつかあります。しかしセラミド配合クリーム(キュレル®やセタフィル®など)は保険適応の薬ではなく市販品あってしかもその中でもお高めなのですよね、、、。

cf.1)Treatment with Synthetic Pseudoceramide Improves Atopic Skin, Switching the Ceramide Profile to a Healthy Skin Phenotype. J Invest Dermatol. 2020 Sep;140(9) 2)秀 道広ほか;スキンケア 3)アトピー性皮膚炎に対する合成疑似セラミドクリームの有用性及び安全性の検討 ヘパリン類似物質含有軟膏との比較;西日本皮膚科 61(5)

☆アトピー性皮膚炎の方の多くはハウスダストやダニ、カビ等にアレルギーがあります。またダニの死骸や排泄物は肌に付着するだけで皮膚バリアーを破壊する作用もあるので、家にカビやホコリが溜まらないように掃除が重要になります。布団などは1平方メートル当たり20秒ほど掃除機で吸引する、ホコリが溜まる場所を減らすように部屋にものを置かないなどちゃんとやろうとするとかなり大変ではありますが、できる範囲で掃除をしましょう。詳しい内容は下記のウェブサイトを参照してください。

参考:東京都福祉保健局 東京都アレルギー情報navi. 室内環境対策 https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/allergy/measure/indoor.html

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