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【個人的備忘録】サル痘(猿よりはげっ歯類に多いようですが)

[2022.07.27]

2022.8.2

厚労省から皮膚科学会へ情報提供依頼が来ているので忘れないように。あくまで暫定のまとめ、新旧の情報が入り混じっているので今後情報を訂正する必要はあるはずです。

致死率に地域差が大きく、似たような症状の病気が複数あり、妊婦・小児の重症化リスクが比較的高め、感染すると隔離期間も長くなりそう(3週間くらい?)、ワクチンも治療薬もすでに存在するということで、流行すると厄介ではあるけれどもそれほど怖がるものでもなさそうというのが今のところの印象です。

【サル痘を疑う暫定基準】(①~③すべて満たしたら保健所へ要連絡)

①水痘など他疾患でない急性発疹がある。

②次のうち1つ以上の症状がある

・38.5度以上の発熱 ・頭痛 ・背部痛 ・重度の脱力感 ・リンパ節腫脹 ・筋肉痛

③次のいずれかに該当する

・3週間以内に、サル痘発生国へ滞在してた

・3週間以内に、滞在歴のあるものとレベル中以上の接触がある 

・3週間以内に、患者あるいは上記に合致する人とレベル中以上の接触があった 

・3週間以内に、複数または不特定の者と性的接触があった 

・臨床的にサル痘を疑うと主治医が診断した

とりあえず現時点での患者の傾向からは、警戒ポイントとして最近の海外渡航歴のある人に皮疹が出たら疑うという感じですがそのうちもっと一般化されるのでしょう。

 

【鑑別疾患】

性器・肛門周辺の皮膚病変:性器ヘルペス、梅毒、帯状疱疹、毛嚢炎、伝染性軟属腫など

直腸炎:淋菌、クラミジア、梅毒、性器ヘルペスなど

全身の発疹:水痘、麻疹、風疹、梅毒、急性HIV感染症、カポジ水痘様発疹症、手足口病、伝染性単核球症、ツツガムシ病、日本紅斑熱など

*特に水痘。ほかに梅毒、単純ヘルペス、伝染性軟属腫との鑑別が必要になる。

 

【症状】

潜伏期 だいたい1-2週間。 潜伏期中央値8.5日

発熱から1-3日後に発疹出現。基本的には顔面四肢に出現し、紅斑→丘疹→膿疱→血痂と進行する。それぞれのステージが混在することもある(水痘と同じ)。

たいていは2~4週間で自然治癒する。小児や基礎疾患次第では重症化することもある。

*全身症状で一番似ているのは水痘らしく(個人的には手足口病も)、初期は特に似ているため容易に誤疹するとのこと。

*水痘と違い、掌蹠に出現することが多く、リンパ節腫脹がみられることがある。

*咽頭、結膜、生殖器の粘膜にも出現することがある。

*初期は陰部のみのこともある。

*サル痘の現在の世界的な発生では、無痛の肛門性器病変(しばしば前駆症状がない)が感染者または感染者と密接に接触した人に観察されている。

*2022年英国で診断された54例のまとめ:年齢中央値41歳。25人に渡航歴あり。症状は、疲労感や眠気:36人(67%)、発熱:31人(57%)、前駆症状なし:10人(18%)。全員に皮膚病変あり。

性器・肛門病変:51人(94%)、全身の複数部位の皮疹:37人(89%)、口腔・咽頭:4人(7%)。リンパ節腫脹:30人(55%)。患者の25%は同時に別の性感染症も診断されていた。入院(鎮痛や蜂窩織炎治療で):5人(9%)。死亡例:無し

 

【検査】

水疱内容液や痂皮、組織からのPCR検査。現段階では疑ったら保健所に連絡でしょうか。

診察・検体採取にあたってはコロナ並みの個人防護具が推奨されている。

ツァンクテストはサル痘でも陽性になるので水痘との鑑別には使えないが、水痘・帯状疱疹ウィルス抗原キットなら区別できそう(未確認)。

 

【治療】 

・未承認治療薬のテコビリマット内服。沖縄など日本の4地域で臨床研究。

・合併症として細菌性肺炎や蜂窩織炎を発症する場合があるため、適宜治療を行う。

・病変による疼痛が強い場合があるため、適宜鎮痛治療を行う。

・不安や鬱などの気分の障害を訴える場合への対応。

 

【死亡率】

サル痘常在国で致死率1~11%程度とされている。

常在国における致命率は高い一方で、非常在国における重症化率については不明であることから、入院での管理を行うことが考慮されている。

 

【ワクチン】

・天然痘ワクチン:日本では「乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」®」が承認されました。欧米では「JYNNEOS® Smallpox Vaccine」メインでしょう。どちらも生ワクチン。効果や副反応の違いは分かりませんが、少なくとも昔の天然痘ワクチンよりはかなり安全になったらしい。接種方法が前者は多刺法、後者は皮下注射。定期種痘が廃止されたのが1976年、私も含め多刺法なんて見たこともありませんという医者が大多数のような気はします。

・昔接種した人の抗体自体は長期残っている事が多いが、サル痘への有効性は不明。接種していた人は未接種の人より発症して症状が軽いという印象は無いという報告がある。

 

【感染予防】

・サル痘の主な感染経路は接触感染や飛沫感染であるが、水痘、麻疹等の空気感染を起こす感染症が鑑別診断に入ること、サル痘に関する知見は限定的であること、現時点では、医療機関内では空気予防策を実施することが推奨される。

・サル痘の患者については、全ての皮疹が痂皮となり、全ての痂皮が剥がれ落ちて無くなるまで(概ね 21 日間程度)は周囲のヒトや動物に感染させる可能性がある。

・患者が使用したリネン類は、病変や体液からの感染性粒子が飛散する可能性があるため、不用意に振り回したりせず、静かにビニール袋等に入れて運搬し洗濯する。洗濯した後は再利用可能。

・サル痘ウィルスは一般的なアルコール消毒、次亜塩素酸、ホルマリン、紫外線、オートクレーブで容易に不活化される。

・患者(確定例)又は疑い例との接触後 21 日間は体調に注意する。

Cf.

1)サル痘(Monkeypox)の診療指針 1.0. 国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター: https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/news/k_20220628kourousyousarutou.pdf

2)厚生労働省. サル痘に関する情報提供及び協力依頼について

3)サル痘に対する積極的疫学調査実施要領. https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kansen/documents/sarutouekigakutyousajissiyoukou.pdf

4)Patrocinio-Jesus R, et al. Monkeypox Genital Lesions. N Engl J Med. 2022 Jun 15. doi:10.1056/NEJMicm2206893. PMID: 35704421

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